真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-06「comment te dire adieu」

f:id:nikaisine:20160503214609j:plain

 

 い指揮官に必要なものはなんだろう。
 統率力、智慧、状況把握能力。個人の戦闘力、結論からすべてが必要だ。率直にCPB傭兵派遣会社第一軍団団長シャルロットはすべて兼ね備えていた。よい指揮官は言い換えれば死神_敵味方いずれにせよ地獄へ送るのは指揮官だからだ。そしてシャルロットは個人の戦闘力に長けている指揮官で、彼女が畏怖される理由であり_それは戦場に惨禍をありありと残していくからに、敵からは当然のこと味方さえも畏怖していた_CPB傭兵派遣会社の公言されない四つ目の条項は「団長より前の場所はデッド・エンド」。
間道を通るは獲物を引っさげて突撃する騎馬部隊と、一斉射撃態勢のまま後退する傭兵派遣会社の軍隊である。
 銃口から煙が吹かれる度に、薬莢が排出されて、騎馬が沈んで、騎手が投げ出される光景は一方的な殺戮の様を呈した。「的当てゲーム」……景品のかわり自らの命を賭けて行われるゲームを兵士たちは真剣に行なう。普段はがさつでのろまで臭くて汚い連中が職業軍人として威光を放つ瞬間だ。また馬が撃たれて崩れ落ちた。
(隊長、やられました)オーウェルの思考伝播。(後方より敵部隊が接近している模様、我々を挟撃するために迂回した模様です)
(陣容はどうだ)
(確認してみます……斥候によりますとこれまでと同じく騎兵隊の模様)
「下らんな」中折り式のランチャーに手のひら大の銃弾が装填される。「我々を殺すならば、銃を持って来い銃を!どけ!」途端にヒステリーを起こしたかと慄く兵たち。みな敵より団長が怖いのだ。「前列部隊は隊列のケツまで後退、以降前線は私が維持する」
 銃を降ろし頭も腰も下げながらシャルロットを横切っていく傭兵たち、含めて皆はまるで今から歴史の一大事を目撃するかのよう態度、馬車に乗せられて移動する者は戦闘が起きていないかのような体で足を伸ばしたりしているが、それでも馬に乗り上がったところのシャルロットに皆の顔は釘付け。そのうち一人は紙とペンを取り出して何やら書物をし始めた。隣に座る男はそれを見かねる。
「記者か」
「ええ実は……」その顔つきは若さ特有の怖気がにじみ出ていて、そのうえ背も低く周りとそぐわないものだったが根性は見上げたもの。一方的な攻撃とはいえど先の銃撃戦に参加していたのだから余程の精神力だ。話しかけられたにも関わらずペンは止まらずじまいで、昔ながらの気骨を愛する男は気に入った。「ガハハ我々の隊に忍び込むとはええ度胸だ、何を書いてるんだ?」
「信じてもらえないかもしれませんが、」答えようとしたところ強引に遮られ「ガハハこの先に起こることのが信じられねぇぞ多分」困惑した様子で「は、はあ……」と傭兵の調子に圧され、下から目線な若者。しかしペンは止まらない。
「まあ堂々と言ってみいや」
「ええと、戦記です……」
「せんきい?」
「はい、城下街の新聞記者をやっておりまして、傭兵会社さんのことを記事にさせてもらおうかなと」
「ウッホ、そりゃホントか。面白くなりそうだなあ、何しろ流れが流れだものな……俺たち最初は物資運搬やってたんだぜ」
「ええほんとです、それはそれは興奮しました……まるで小説みたいな流れに!」
はあ?と両手をあげて呆れたジェスチャー。「お前も銃ぶっ放してただろ、イカれてやがるぜ、ガハハ」皮肉な笑いの中でペンを滑らせる。

_<傭兵たち>の先頭に硝煙の「魔女」?CBP傭兵派遣会社の戦闘記

 とんでもないものを目にした。先のテリヤ領叛乱において、帝城の側面側に迫る部隊を<偶然にも>迎撃したCBP傭兵派遣会社は、かつての大征服戦争で名を上げたノーブルステン元大将軍が立ち上げたからして、その戦果は正規軍に劣らぬ、いやそれ以上にも迫るものだった。
(中略)それは私がみなと同じよう馬車に腰掛けたときのことだ。後退戦であり、相手は重騎兵だというにもかかわらず、傭兵諸君らはみな、安心しきって体を背にあずけていた。これは実に奇妙なことであったが、それより先の奇妙な出来事に印象が塗り替えられてしまった。
 先陣に立つ第一軍団隊長シャルロットが、大きく何かを描くように人差し指を宙空で動かすと、たちまち迫り来る重騎兵たちが爆発したのだ。この記事の作者はこの先の記述にかけて、絶対に嘘や偽りがないことを誓うが、ウソのような記述となってしまっていることをご了承願いたい。
 爆発は、人為的……第一軍団隊長が引き起こしたという意味でなら人為的なのだろうが、およそこの世の某かによって説明できそうにない原理で起こっていた。それからも突撃の度に爆散するがあまり、テリヤの重騎兵は足を止めて追ってこなかった。はたして彼女はいったいどんな兵器を用いたのか。新型銃を手に提げてはいたが、それを使用した動きはみられなかった。個人的な推察だが、私は指の動きが楽器の弦をつまんで弾く動作のように見えた。それはかの大征服戦争以前、魔女……おもにウイッチクラフトで使用された<見えない導火線>のようだ。かれら魔女はわれわれの粛清に反抗し、われわれが剣と槍で戦いに臨んでいたのに対して、魔女は特有の魔術道具を用いて、われわれを苦しめた。私は魔術道具ないし魔女について、大昔の資料でしか知り得なかったのだが、今記事で記された出来事のそれも、それら魔術道具のものであったように思えてならない。

そこまで書かれた紙は強引に取り上げられて、「あっ何するんですか」と声をあげた目前にはシャルロットのその人の姿。すでに戦闘_らしきもの_は終わって、馬車に上がり込んでいたのだ。あっ……終わった……顔が真っ白になりゆくのを感じて、次に受ける制裁の凄惨さに震えるが、シャルロットはその記事に目を通して「いつもご苦労」と言う。
「じゃあ載せていいんですね」
「私の一存では決められないが良いだろう、新聞に毎回の活躍を書いてくれているのは感謝しているからな。だが私からの条件がひとつ。魔女に関する記述はいっさい消去しろ」
「……」それは出来ない!と意気込む手前で強く睨みつけようとしたが、相手の顔や目といった形相……これら総てが自分を威嚇する蛇のようで……自分の勢いを遥かに上回った威圧に、彼は押し込められざるを得なかった。というものの、その瞬間で動けなくなったのだ_まるで磔にされたかのように。それというのも彼女の眼光が青から赤へ変わったのも見てしまって、彼の中でその一抹の出来事はこの恐るべき女隊長による呪縛にかかったものだと完全に断じた。しかしそれを声や態度におくびにも出さず、平然なふりをして答えた。
「わかりました。すべてその新型兵器によって殲滅されたと書きます」
「すまんな、事情があるんだよ」相変わらず人を寄せ付けない雰囲気ではあったが、先の瞬間の剣呑さは消えていた。
軍列は仮兵舎を構えたノーブルステン隊と合流するために向かっている。後衛の隊も掃討が終わり、いまは全体として呑気な雰囲気に変わりつつある中で、その男は意思を固めていた……心中の炎を燃やすは使命感。
(あの女、なにか知られてはいけない事情を抱えている。新聞が城下街で頒布されるからして、その事情は帝城に広まっていけないものだ……暴いてやる、おれは記者だ、ぜったいに暴いてやる……)


 子のついた扉がそれらしい音を立てて開くと、黒いローブに身を包んだ少女が「本日はお日柄も良く_」の台詞と共に入ってくる。陰気そうな男が一人、ベッドに腰掛けながら顔をこちらに向けると、その顔は目の下に隈を作り地獄の亡者を連想させたが、<実際に地獄の亡者よ。>「あらら。自殺ね」
「……」しばらく黙っているのをみて、少女は扉を閉めた。バタン、と音を鳴らしたあと一切の無音状態。彼女は引き寄せた隅の椅子に座り、しばらく唇をへの字にして押し黙る。
「あなたは私……なわけがないか」
「僕は死んだのか」
「勿論」
 ようやく口を開いた彼をみると、その肩に金の刺繍の礼装は彼女にとっては見覚えがあるもので、懐かしき過去が<映像によってお送りするから、あなたは見ちゃいやん>。全てが水に流れた彼女にとって、それらは過去の産物、遺跡の瓦礫
「正確に言うとあなたは死んでない。でも生きてさえいない」
「……それはどういう意味だ」
 さてね、そのまんま以上の意味があるかしら、とため息を付く。わたしたちは生きてさえいず、死んでさえいない。そこは主辞と述辞の関係が問題にされるべきだった。<わたしたちは>という述辞に対して何ら答えられていない。今ではこれが限界だった。言葉が現実を縛っている。言葉で出来ている現実とは常に主辞のない一文だ。わたしは今より強い現実を示すことで、この欠けた現実から逃走を図らなければならない。
かつてそれを試した黒魔術師がいたが、<それはもう昔の話だ>
「現世に戻りたい?」
「……」男は目を下にむけて何も言わない。「それじゃあ現世を見てみようか」と脇から取り出すは何の変哲もない四角い鏡で、意匠が施されていない単純なものだったが、少女が持つと天井を写していた鏡面が波紋を広げ始めて、波紋の感覚が段々と狭くなっていき、一と零が徐々に近づくにつれて、明るい場所が暗くなって暗い場所が明るくなり、鏡の天使が歌を歌い始めた。だがここに天使などいない。何故いないのか。あなたはどうしていなくなってしまったの。どうして。どうして。どうしてなのエレノア。どうして死んじゃったの。窓辺に寄り掛かると涙が噴き出て止まらないものだから、頭を伏せてみると今度は泣き止めることが出来なかった。外で鳴る喇叭の音が避難勧告を告げていたが、そんなことはどうでもよかった。エレノアの死に伏せて居たかった。
 エレノアの大馬鹿野郎、と壁をつま先で蹴ってみると初めて自覚できた。悲しみとそれに反する怒り、そして諸々の感情に苛まれて、端的に自分は錯乱している。きをとりみだしている。ワタシハ・カナシンデルンジャナクテ・オコッテルンデモナクテ・タダタダ……。
 エレノアと最後に会ったのは昨日の夜、それは二人で湿気のない風にあたっていた時。「もう私、あなたのこと信じられない。ううん、違う、私はあなたのことを信じたいけど、どうしても信じられなくなっちゃって、それが悪いとか良いとかも判断できなくて、ううん判断とか、そんなことを言いたかったんじゃないの。ごめんなさい、もう私どうしていいのかわからない」
 その時エレノアはどう言った。「分かった、」と言って「分かったから」と何度も何度も安心させるように言って、泣き止まない彼女を家まで送っていった。家についた二人はなんとなく離れる気になれず、家の前で座って黙っているばかりで時間は過ぎていった。しかしエレノアは若き執政官、時間は夜の明ける頃合い。肩を叩かれた彼女がエレノアをみると優しい顔をしていた。
「僕はこれから仕事がある。ごめん。また明日、来るからその時に話そう」それが彼女とエレノアの最後の会合となった。
そこで暗転、目が覚めるようにして彼は起き上がった……そこは自宅でもなく仕事場でもなく、古さびた牢屋のような場所。
「あらあら、これは行くっきゃ無いんじゃないか」と少女がにこやかに笑う。「泣かないこと、いい男が台無しだ」いつのまにか夢をみていて、しかしそれは夢ではない現実で、そして涙までもが流れていた。「サーシャ……」彼女の名前が口から零れる。
「全く、国はどうなってるのかしらん。若い者がばんばん政治の壇上に上がっていて、こんな彼女に別れられて自殺するような男までが、どうしてこんな」
「僕は自殺なんかじゃない」
 はっきりと口にされた言葉が自分の見立てを裏切ったことに彼女は驚いて一瞬固まったが、口頭が上がり、「面白い」と呟いた。「それは死ぬ寸前のことを思い出したのか」
「いや……はっきりと思い出したわけじゃないけど、僕は確かに自殺なんかしていない。それははっきりと言えるんだ、第一自殺なんてするわけないじゃないか、僕は執政官だぞ、エレノア・ラングホルンだぞ、ラングホルン家の名に誓って、はっきりと言ってやるんだ、『僕は自殺なんてして、いない!』」
「ようし言った、それじゃあわたしが久しぶりに腕をみせてあげよう、エレノア・ラングホルン、しかし向こうの肉体に君を再び移譲させることはできない。何故なら肉体自体がすでに処理されてしまって、灰にでもなったから。だから、正直きみが何の肉体に移譲するかは、はっきり言って特定できないんだわ。すまないわね。わたしの<紅い目>をみつめていろ。すると次第に、だんだんと視界が真っ赤になっていくからな、君は渇き目か?そんなことは心配しなくていい……<エレノア・ラングホルンは乾き目でない>からだ……」
「あなたは誰なんです」
「世界と言葉はお互いがそれ自体だ」
 次第に赤い目が大きくなっていく。それは彼が小さくなったかのような錯覚。はたして錯覚なのか。いまや彼は小人で彼女は巨人だ。この世界においては。
「私の名前は失われて久しい……ここは死ぬことも生きることも出来ない死者の仮説空間で、ここで私は謂わば管理をやっているわけだが、気が狂ってきてな。ふふふ、だって私の体はここにないんだぜ、不気味だと思わないか?その訳の分からない存在が、こうやって台詞を話して、君たちに語りかけているんだぞ……君たちの私は一体どんな姿でこんな気違いを演じているんだ?私はな、やっと気付けたんだよ、喪われたのは能記と書記の境界線だってな。存在論の充溢を求めてこの涅槃に身を投げ打った私はいまや非存在論者だ……ナースティカ、ナースティカだ、厳密に定義はふたつ別れんだが、概ねこちらでも正しかったはずだ、うん、いい響きだ……ふふふ、ナースティカ。再びここに戻ってきたときに、そう呼んでくれ……」そして、再び世界は暗転する。

真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-05「空が紫色だから」

f:id:nikaisine:20160329023214p:plain

 笑しいわ。可笑しい。これで呪術は成功したの本当に。こんな雑念だらけの人間がいるのに。
振り向けば何百の坊主頭……目を瞑りながら意味不明の言葉を合唱している一同。聞くところ語句や語調に一寸の違いもなく合唱は見事に洗練されていた。
横をみると姉妹たちが同じく祈祷を捧げている。向かって御前に立てられた無数の燭台_数は恐らく祈祷者の分だけあるのだろう_にロウソクの紫色の炎が全く揺らぎもせず直立したまま燃えていて、それは風が吹いても雨が降っても何ら影響のない呪術的な造り物であることを示していた。

続きを読む

真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-04「Emergency,Eleanor.」

f:id:nikaisine:20160321211526p:plain

 ーネチカ城下街の玄関として聳え立つ凱旋門“ベノセレク”から、絢爛豪華な街並みを真っ直ぐに進むと、十字路を幾度か越えて、元老院議事堂“ユリアクリアナ”に突き当たる。ユリアクリアナの鉄扉に配備された数人の門兵が俄に集ってきた民衆_もちろん野次馬から鬱憤晴らし、権威嫌い、教授や医者までもが揃った_を剣や槍をかざして抑制する陰で、“黒のリクトル”パイレート・アープが銃の装填を門兵長に披露していた。慣れた手さばきで銃弾が抜かれる。

続きを読む

真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-03「ディアナの夜」

f:id:nikaisine:20160207192621j:plain

 リヤ城塞天守閣の襖が開け放たれた。城塞の外から見る者は「金の風が吹いた」と評したかもしれないが、あいにく人はいなかった。
「戦の前は悲しゅうございますなあ」襖を開けたは筋骨の逞しいその老人、着物を着崩して露出した上半身は肌理の細かさが皺の多い顔貌と相違する奇怪な容姿である。天井に頭が擦れるほどの大きな背丈を動かして、畳敷きの上に両手を置き両足のつま先を半回転、見事な逆立ちの姿勢を作った途端に右手をそっと除けるやいなや、残る左手だけで姿勢を支え始めた。「逆立ちになるとものがよく見えます」

彼がみた空は雲ひとつ無い快晴だった。高階ゆえに風が老人の体を刺すように吹いてきたが、その姿たるや筋肉岩、岩筋肉。

続きを読む

真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-02「Love in the Crimson eye」

f:id:nikaisine:20160306154958p:plain

 

覚めたとき現在地は病室であると推測して彼は起き上がった。しかし薄汚れた壁に閉塞的な部屋に黒い壁面に窓の鉄格子は想像する病室とかけ離れた印象を与えた。それはまるで牢屋。現在地は牢獄の一室であると認識を改めて彼は何処ともない宙空へ中指を立てファックサイン。大きく息を吸い込んで「ファ__」だが気晴らしの一声は中断された。
ファックサインへの応答かは分からないが声が聞こえてきたのだ。それも女の子。どうやら歌だ。彼は耳をすませてみる。未だぼんやりしない意識に歌声が流れてくる_

天国は善人でいっぱいさ

みんながみんな、善人さん

地上の生者はいい人ばかりで

閻魔に仕事は流れてこない

天国は仕合わせでいっぱいさ

おれらもかれらも超ハッピー

人のいない地上の果てで

閻魔が地団駄踏んでいる

続きを読む

真・ペペロビッヒ少佐のだいぼうけん S-01「CPB傭兵派遣会社行軍行路」

f:id:nikaisine:20160227172955p:plain

営に到着したとき不意に男たちが湧き立ったのを「黙れ」と一喝で制したシャルロットはその心の内、憤っていた。
(今作戦において傭兵会社の扱いにとやかく言える筋合いは我々にない。しかし腑に落ちん)
 しかし彼らの理念と希望、会社の姿勢とは違った役割を押し付けられたことにより、部下たちは声を荒げている。元来が荒くれどもである彼らは発奮を抑えることのできない者どもが紛れており、そんな彼らはこうして腐り始めた。
「ケッなにが“縁の下の力持ち”だ。こちとら正規のお騎士様よりだいぶ訓練を積んでるはずよ」独りごちるクレーンに周囲が反応する「全くだ」「お騎士様は暖炉でミカンでも喰ってろ」「老いに怯えるジジイよか素直に老いた我らは誇らしい」
 「黙れ」再び一喝。歳だけ食った大きなお子様を叱れるのは、彼女の有するカリスマのお陰。そしてこの場の荒くれに限らず傭兵会社の下っ端の誰しもが彼女に惚れているというのもある。畏敬と恋慕、この二つの奇妙なブレンドで彼女は崇拝されていると言っても過言ではない。
「クレーン、貴様立て」始まった……とザワつく荒くれはその一人一人、青褪めた顔をしている。仲間の苦痛をいたわる情緒は人一倍なのだ。伊達に歳を食っていない。クレーンが立ち上がる。脚をガクガク体はブルブル。これから始まる言弾の打擲を思えばこんなものでない。

続きを読む

実験的に公開中です